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2024.10.17

訪問看護師の1日に密着してみました!

「訪問看護ってどんな感じなんだろう?」はじめての訪問看護に挑戦してみたい、と思っている方へ、当法人の訪問看護ステーションの雰囲気や日常をお伝えします!
今回は看護師ではない一般の事務職員が訪問看護師に同行、訪問看護初体験の目線でお伝えできればと思います。

9月某日 朝8:50朝のミーティング

今回はおおもりまち訪問看護ステーションへお邪魔しました。
勤務室の壁には大きなホワイトボードがあり、看護師の名前と、本日の訪問予定がびっしりと描かれています。
この日の出勤は看護師とセラピスト合わせて12名でした。

「おはようございまーす」と元気な声が飛び交う中、机の上には本日の訪問予定の利用者さんのカルテが積み上がり、カルテチェックが始まります。
カルテをめくりながら、「あ、そうそう」と前回訪問した看護師が、今日訪問する看護師に申し送り、二人ではいはいと頷きながら、あちこちで会話が弾みます。
「おはようございます、朝礼始めまーす」と所長の一声で、皆さん席に着き、朝のミーティング開始です。

 

 

まずは、大田病院ニュースで入退院者の確認。
あらたに利用者さんが入院していないか、退院した方がいないかをチェックします。
次に、今日のカンファレンスや面談の予定を共有します。

「Aさん、11:00~面談室でサービス担当者会議です」
「Bさん、14:30~退院カンファです」

皆さん、必要なことはメモを取りながらミーティングが進んでいきます。
「みんなのノート」は情報の共有用です。大切なこと、伝えておきたいことを、数日にわたり申し送ります。

「Cさん、奥さんが入院中です、点眼薬の管理について、娘さんから相談を受けています、ケアマネさん(ケアマネジャー(介護支援専門員))と連絡を取っています」
「Dさん、△日から検査のため入院します、検査はFGSと腹部エコー」
「Eさん、〇日から訪問の時間が30分になります」
「Fさん、膀胱洗浄が週3回に増えました、バルンフレンチ(膀胱に通す管のサイズのこと)変わったら報告してください、かかりつけはGクリニックです」

訪問看護はプライマリー制ですが、1人の利用者さんを4~5人の看護師で担当するため、情報の共有は欠かせません。
ただ、利用者さんと看護師の相性など問題があるケースもあり、どうしてもこの人じゃないと…ということで1~2名で担当することもあるそうです。

次は、夜間のオンコールの報告です。
「Hさん、深夜2:00と3:00に、眠れない、と電話ありました」
「Iさん、朝6:30に尿が出ないと電話がありました、家族の話では便失禁あり、8:00に訪問し、主治医に連絡済です」など。
訪問看護は、病院(主治医)やケアマネとの連絡が早いですね。在宅での療養だからこそ、細やかな連携が必要なのだなあと思いました。

 

 

ミーティングが終わるとミニ学習会、今日は『弱ったお肌に合わせたスキンケア』
やはり利用者さんは高齢者が多く、皮膚のトラブルも多いのでしょうね。
プリントを読み合わせしながら、うんうんと、皆さんペンが走ります。
毎日忙しい中、こういう限られた時間で学習をしているのですね。

9:00を過ぎたあたりから、ミーティング中にも関わらず、電話が鳴り、来訪者もあります。
そのたびに、入り口近くのスタッフがさっと立って対応しています。
9:20
学習会が終わり、各自スマホを身につけ、個別の申し送りなどを済ませたら、それぞれ訪問へ出発です。

大きなバックには、利用者さんの情報の入ったファイル、看護記録用紙、血圧計、体温計、処置用品などの入ったケース、利用者さんにお渡しする書類・物品などがぎっしり詰まっています。
リュックを肩に掛け、電動自転車のバッテリーを持ったら「いってきまーす」と出かけていきます。

出発_訪問看護師の1日

 

 

9:40 一件目のお宅に訪問

一件目のお宅に到着、チャイムを鳴らし「おおもりまちです」と声をかけると、ご家族がドアを開けてくださいました。
「あれ?あなた久しぶりじゃない?この前は一か月前くらい?」
「そうなんですよ、3週間ぶりかなー調子どうですか?」と気さくに話しながら、お部屋に通していただきます。
「洗面所お借りしますね」看護師は持参のハンドソープで手を洗い、それから利用者さんの枕元へ。

ご家族へ
「ご飯は食べてますか?便は…出ないですよね?」
「そうなんだよねー」
「じゃあ、今日はしっかり便を出しておきましょうね」
と話しながら、リュックから血圧計を取り出すと
「血圧測りますねー」、
「Jさん、大きく息を吸ってください」と聴診器を胸に当て
「胸の音聞きますねー」、
ファイルを開き、バイタル(バイタルサイン=体温、血圧、心拍数などを測定する)を記入し終えると手早く床に新聞紙を敷き、ビニールエプロン・手袋を身につけ、ベッドにビニールシーツを敷きながら、常に声を掛けていきます。

今日は排便の処置と皮膚の状態の確認などを行います。
「腰に触りますよー」
「ちょっとお薬入れますねー」
汚れものはすぐに床の新聞紙の上へ置き、便が出るまでお腹をマッサージ。
マッサージしながら「手でグーチョキパーをしましょう」とさりげなくリハビリ。

一件目_訪問看護師の1日

ご家族に
「デイ(デイサービス)は休まず行っていますか?」
「そうねーでも月曜日(祝日)休みになっちゃうからねーでも振り替えてもらって行ってるよ」
しばらくお腹をさすっていると無事に便が出ました。
手早く回収して、トイレに流し、ソープとお湯できれいに洗っていきます。
ボディソープや洗浄用のボトル、トイレットペーパー、タオル、新しいオムツ、お宅によってはおしり拭きや綿棒なども、ベッドから手の届く場所にまとめられて用意されています。
処置が終わると、汚れものをまとめて新聞紙にくるみ、ご家族へお願いします、とお渡しします
ご自宅という限られた空間の中で、とても手際よく処置をすませ、ご家族に話しかけながら情報収集などもしていきます。
「ちょっと靴下脱ぎましょうね」手足の皮膚の確認をしながら、保湿クリームを塗っていきます。
「ここ痛くない?なにかぶつけたね?ここ?」
腕に大きな絆創膏が貼ってありました。
ご家族によると、デイで貼ってもらったとのこと。
はがしてみると少し傷になっていて、
「絆創膏だと傷の周りの皮膚が荒れちゃうから、ガーゼにしましょう」
とガーゼ保護の仕方をご家族に指導します。

複写式の看護記録に処置の内容や、先ほどの皮膚の状態などを記入_訪問看護師の1日

複写式の看護記録に処置の内容や、先ほどの皮膚の状態などを記入し、1枚はご家族にお渡しします。訪問看護の記録をご自宅で1冊のファイルに綴じていただいているとのこと。
これを訪問介護のヘルパーさんが見たり、往診の先生が確認したりするのだそうです。
最後に手を洗わせていただき「終わりましたので失礼します」と声を掛けると、ご家族が見送りに出て来てくれました「ありがとうね」。

訪問時間は45分ほどでした。
介護保険だと1時間、医療保険だと30分が多いそうですが、処置が多い方(酸素してる方など)は90分もあるそうです。
また30分でも毎日訪問に行くという方もいらっしゃるとのこと。
訪問看護は、まさに在宅で療養されている患者さん・利用者さんを医療面から支える要なのだなと思いました。

 

2件目のお宅への移動は、かなりマニアックな道を走って行きます。
毎日自転車で走り回っているわけですから、細い道もよくご存じだなあと。
きっと近道なんでしょうね、何せ追いかけるのに必死だったのですが。

2件目のお宅への移動_訪問看護師の1日

 

 

10:35二件目のお宅に到着。


ご家族に「今日はちょっと二人でお邪魔しますね」と声を掛けると、スリッパを二足出してくださいました。
「後でいいんだけど、ちょっと聞きたいことがあるんだよ」
「分かりました、じゃあ先にやっちゃいますね」
と、こちらも一件目と同じ処置を始めます。
衣服をゆるめ始めると、ご家族が手伝いに来てくださいました。
処置の間、利用者さんの、背中と頭の後ろを支えるご家族の手が、とても優しいのが印象的でした。

この方は胃ろう(お腹に穴を開けて、胃に管を通し直接栄養液を入れる処置)をされているので、看護師がお腹のマッサージをしながら、胃ろうの部分もみていきます。ガーゼをあてながら看護師が
「さっきの聞きたいことって何でしょう?」
とご家族に声を掛けると、
「これ見てもらいたいんだけど…」と胃ろうのチューブを持ってこられました。
「ちょっと汚れが目立ちますね、これは使わない方がいいですね、デイでやってもらってるんですよね?ケアマネ(ケアマネジャー)に連絡しておきます。」
と話すと、「そうなんだよ」と安心されたように頷き「よろしくお願いします」とホッとしたように言われました。

リハビリ_訪問看護師の1日

処置を終えると首のあたりを見ながら
「Kさん、このへんもだいぶ良くなりましたねー」
と、腕・足と皮膚の状態を確認していきます。
ご家族が
「でも、このあたりがまだちょっとね」
「あーほんとだ、そうですね」
保湿クリームを塗り終えると、少しリハビリをします。

肩をさすり、ゆっくり曲げ伸ばし、手を動かしてマッサージ、足もゆっくり持ち上げて下ろします。
おおもりまち訪問看護ステーションにはPT・OT(リハビリを行うセラピスト、理学療法士・作業療法士)もいて、訪問することもあるそうですが、看護師でもできるリハビリを教えてもらい、訪問の度にしているそうです。

こちらも訪問時間は50分ほど、最後に手を洗わせていただき「終わりました」と伝えるとご家族が玄関まで見送ってくださいました。
こちらのお宅では、高齢の夫婦二人暮らし、デイサービスなども利用しながら頑張っておられるようですが、最近介護者の物忘れなどもあり、ちょっと心配な利用者さんなのだそうです。
「お二人とも元気なうちはいいんですけど…」
と介護者のことも気遣っていました。

次のお宅への移動は少し長く、大きな通りを渡り、信号を何度も通り抜けて、ずいぶん距離が離れているなあと思ったのですが、移動時間は10分ほど。
電動自転車とはいえ、移動速度の早いこと!
これも利用者さんを余計にお待たせしないように、時間通りに訪問するための配慮なのでしょう。

 

 

11:35三件目のお宅に到着。

三件目のお宅_訪問看護師の1日


チャイムを鳴らすと、ご家族とワンちゃんのお出迎え。
こちらの方も排便の処置と、あと今回から栄養剤が変更になるということで、物品のお渡しと取り扱い方法の説明も行います。
ご家族は「便がゆるいんですよねー」と気にされている様子です。
先の二件と同じように、利用者さんにお声がけしながらバイタルを測り、手早く処置の準備に入ります。
利用者さんは比較的お若い方で、先日下肢の補装具を作成し、歩行のリハビリをされているとのこと。
看護師が
「そう!動画送っていただいて!みんなで見ましたよ!すごい!ってみんな言ってて、Lさん、すごい頑張ってますよね」。
娘さんが
「そうなんですよー、型を取ってもらってすごいの(装具)作ってもらって。でも歩けたので。本人はちょっと痛いみたいなんですけど」
「(装具が)当たるのかなー?痛いのは(主治医に)伝えたほうがいいですね」。
ご本人は少し顔をしかめていましたが、照れ隠しのようにも思えました。

栄養剤_訪問看護師の1日

看護師がお腹の胃ろうの部分をみて
「ちょっと血がついていますね、これガーゼ朝取り替えました?」
「ええ、朝に」
「ちょっと新しいガーゼにしておきますね」
排便の処置が終わると、娘さんが
「それで栄養剤のことなんですけど…」
と少し不安そうに言いだされました。
「あ!そうですね、今日からですよね、持ってきましたのでこれから説明しますね」
と看護師が物品を取り出し、説明書きを示しながら丁寧に説明していきます。
何度も質問される娘さんに、その都度何度も丁寧に答えていきます。
「大丈夫そうですか?」
娘さん
「はい、やってみます」
「もし、途中で分からなくなったらお電話くださいね、事務所には必ずスタッフがいるのでだいじょうぶですよ」
と看護師が伝えると、少し安心されたようで、ホッとした表情が印象的でした。

こちらのお宅での訪問時間は50分ほど、三件目の訪問を終えると、もうお昼休憩の時間がせまっていました。


三件とも、利用者さん・ご家族と看護師との関係性の濃さが印象的でした。
利用者さんのお宅に1時間ほど滞在して、処置やリハビリなどを行うため、ご家族も「あ、そういえば」などと気軽に色々なことを聞いてきてくださったり、お宅によっては処置を手伝ってくださったりもするため、利用者さん・ご家族とお話ししながら、「そういえば〇日から入院なんだよ」とか、「デイ(デイサービス)では起きてるみたいなんだけどね、家では寝てばかりだよ」とか、自然に利用者さんの情報が引き出されてきて、これぞ信頼関係の成せる業なのだなと思いました。
ひとりひとりのケアに時間をかける、というのは、利用者さん・ご家族の方が看護師に気を許せる関係性を作り上げていくということ、これが訪問看護の魅力なのかもしれません。

訪問看護師のMさん_訪問看護師の1日

本日、同行させていただいた訪問看護師のMさん

 

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